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働くパパはカッコいい? 第347話
「由羅、やっぱりなにかあんだろ!?」
莉奈が反応してくれないので、オレは仕方なく由羅に視線を戻した。
莉奈の言葉を遮ったってことは、オレに聞かれちゃ困るってことだよな?
「私は嘘は言っていないぞ?私が綾乃の代わりに弁償したわけでもないし、脅されているわけでもない」
なんかひっかかる……オレに言ったことは嘘じゃないかもだけど、言ってないことがあるんじゃねぇの?
「……だって由羅、前にお見合いした時だって……相手が取引相手の娘とかでなかなか断れないって困ってたじゃねぇか!……だから、今日のもなんか……オレのせいで厄介なことになってんじゃねぇのか?」
「あぁ、あの時のは、何度断ってもしつこく付きまとってきたからな……」
「それって……今日の女も同じだろ?」
「ん~……?まぁ今日のもそうだな」
「じゃあやっぱり……」
「しつこいのは同じだが……大丈夫だ」
大丈夫って、なにがだよ!?
「あの時、綾乃に懇々と説教されたからな」
由羅があの時のことを思い出したのか、ちょっと顔をしかめて苦笑いをした。
「あれはおまえが莉玖を巻き込んだから……!」
「そうだな。あの時は……連日の待ち伏せのせいでなかなか家に帰れなくて……仕事も妨害を受けていろいろとイラついていたとはいえ、あの計画は短慮だったと私も反省している。だから、あれからちゃんと対策を練り直した。今はああいうのにはそれなりの対処をしているから大丈夫だ」
それなりの対処の具体的な内容は教えてくれなかったが、前回の失敗から対策を強化したとかで、今はもうあの時のようなことはないのだとか。
まぁたしかに……あれ以来、そういう迷惑女関係で帰りが遅くなるようなことはなかったけど……
っていうか……オレも今回莉玖を巻き込んだんだよな……
オレたちが会社に着いた時点でもうあの女は受付で喚 いていた。
つまり、オレが莉玖の手を離さなければ、きっとあの後すぐに警備員がそれなりの対処とやらをして丸く収まってたってことだよな?
あの場でオレがするべきことは、莉玖を連れてさっさとあの場を離れることだったんだ……
それなのにオレは……莉玖に怖い思いさせて、後始末は由羅になすりつけて、結局オレは迷惑だけかけて……
だけど、由羅はそんなオレに何も言わない。
由羅がオレに何か隠してるのは……言ってくれないのは……
言うだけ無駄って思われた?呆れられた?
いっそ……怒ってくれた方が……
「……綾乃、そんな顔をするな」
「うるせぇ!変な顔は生まれつきだっ!」
自分が情けなくて、悔しくて……泣けてくる……
いや、泣かねぇけどな!?泣いてねぇよ!?
「変ではないが……眉間に皺を寄せるな。可愛い顔が台無しだぞ?」
「はあ!?か、可愛くねぇよ!」
「じゃあ、cute face」
「きゅ……?って、同じじゃねぇか!発音よく言ったってオレだってそれくらいわかるんだからな!?」
「ふ、くくっ……そうか……それは良かった」
何笑ってんだよ!
「ところで由羅……この手はなんだ?」
「ん?」
「おまえはさっきから……~~~~なにシレっとオレの尻を揉んでるんだよ!」
オレは由羅の手を掴んで自分の尻から引きはがした。
こいつは~~~~!オレが真面目な話をしてるっつーのにぃいいいっ!!
「……バレたか」
由羅が全然悪びれる様子もなく、オレに引きはがされた手を見ながら呟いた。
「バレるわ!てめぇの尻を揉まれて気付かないほど鈍いと思われてんのかオレは!?」
「綾乃ならあり得る」
「あ゛?ケンカ売ってんのか?」
「そうじゃないが……というか、これは不可抗力だぞ?」
「不可抗力?」
「綾乃の尻が私の手にフィットするのがいけないんだ。揉んでくれと言っているようなものじゃないか!」
――……んん?
「はああっ!?」
え、なにこのIQ3みたいな会話……オレはなんで自分の手とオレの尻のフィット感について
真剣な顔で話すようなやつに雇われてんだ……?っていうか、手にフィットする尻ってどういうことだよ!?
「だいたい、私の上に乗ってきたのは綾乃だろう?私が無理やり乗せたわけじゃないぞ?」
「ぅ……それは……まぁそうだけど……」
って、尻を揉ませるために乗ったわけじゃねぇし!?
「じゃあ、どうして乗って来たんだ?」
「え……?」
あれ?そういえば、オレはなんで乗ったんだっけ?
「えっと……それは~……っんぁ!」
オレが上を向いて考え込んだ瞬間、由羅の手がスルッと服の中に入ってきて脇腹を撫でた。
「~~~~~っ!!」
うわっ……油断してたから変な声が出たぁ~~~!!
なにしやがんだよもうっ!オレ脇腹 弱いんだよ!
思わず両手で口を押さえて由羅を睨みつけると、由羅がニヤリと笑って両手で脇腹を撫でてきた。
「おまっ、何やって……ちょ、やめっ……!」
ヤバいっ!由羅のやつ変なスイッチ入った!?
「くっ……ぁっ!やめろって!由羅っ!……っははは、くすぐったいってば!」
慌てて逃げようとしたが、由羅の上から退こうとすると由羅にしっかりと腰を掴まれてしまい動けなくなる。
くすぐられないように脇を自分の手でカバーしつつ、もがきながら横に転がるのが精一杯だった。
「やめっ……ちょ、マジで……っも、あっははは、腹痛いって!……っ」
ひぃ~~~!やだぁああ!笑いじぬぅ~~~!
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