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働くパパはカッコいい? 第350話

『ねぇ、普通そこまでいったら最後までシない?するでしょ!?』  翌日オレは、莉玖がお昼寝をするのを待ちかねたように出て来た莉奈に『そこに座りなさい!』と正座をさせられ、懇々と説教(という名の恋愛指導?)をされていた。 『兄さんのこと好きなんでしょ?』 「嫌い……ではない……です」 『ハッキリと!』 「……ぅ~~……す、好きデス!」 『だったらどうしてそんな中途半端なところで終わってるの!むしろそんな中途半端なところでよく終われるわよね。普通そのまま勢いで最後までいっちゃうと思うけどなぁ……』  どうしてと言われましても…… 「それは……そのぉ~……だって……」 『だってじゃありません!ふたりともいい歳した大人なんだから!何を今さらぐずぐずしてるのよ!もうすでに一回抱かれてるんだし、さっさとくっついちゃいなさいって言ってるでしょう?周囲に反対されてるわけでもないんだし!』  たしかに、反対はされていない。  それどころか、なぜか由羅の姉の杏里さんも、由羅の妹の莉奈も、オレの母親も……身近な人たちはオレと由羅を積極的にくっつけようとしてくる。  身内に反対されないのはいいんだけど…… 「……そんな簡単な話じゃねぇんだよ……」   『だか……』 「ん~ぅにゅ~……ぁ~にょぉ~……」  ハッキリしないオレに焦れて莉奈がたたみかけようとしたところで、莉玖が目を覚まして目を擦りながら器用にゴロゴロとオレのいる方へと転がって来た。 「莉玖~、おはよう。今日は早いな」 「あ~のぉ~、ちっこ!でた!」  昼寝の時間が短いということは、今夜は早めに寝てくれるかなぁ~?と淡い期待が()ぎる。  そんなオレに向かって莉玖がニヒッと笑って自分のお腹をポンポンと叩いて見せた。 「ん?出た?それで目が覚めたのか。どれどれ……え、出てないぞ!?これから出るのか!?すごいぞ莉玖!よ~し、トイレまで飛んでいくぞ~!ピュ~ン!――」  オレはこれ幸いと莉奈との会話を切ると、莉玖を抱き上げてトイレへと急いだ。   『あ~もう!とにかく、いつまでものらりくらり躱してないで、いい加減に真剣に考えてみてよね!そうじゃないと……じゃなくて、さすがに兄さんが可哀想だわ――……』 「っ!?」  莉奈はオレにだけ聞こえる声でそう言うと、わざとらしいため息と共に姿を消した。 ***  その日の夜。  昼の定期連絡で由羅から「今夜は帰りが遅くなる」と聞いていたオレは、片付けを後回しにして先に莉玖を寝かしつけると、莉奈に莉玖を頼んで一階に下りた。 『――兄さんが可哀想だわ……』  いつもなら「はいはい」と笑って聞き流す莉奈の言葉が、今日に限ってなぜか頭から離れない。 「あ、そうだ!掃除しよ!最近莉玖の動きが活発だから目が離せなくて掃除が雑になってたしな!」  莉奈の言葉を頭から追い出したくて何となく掃除を始めたのだが…… 「――……ハッ!?」  気がついたら夢中になってしまって台所の油汚れや窓、トイレ、風呂、廊下がピカピカになっていた。  ふぅ……久々に本気で掃除しちゃったぜ!  掃除は無心になれるからいいんだよな~。うん、スッキリ!  換気のために開けてあった窓を閉め、両手をうえにあげてウ~ンっと大きく伸びをすると、そのままドサッとソファーに倒れ込んだ。 「はぁ~~~~~……」  ……由羅、遅いな……今日は何時くらいに帰って来るんだろう……  晩飯は用意してあるし、あとは寝室に戻って莉玖の様子をみながら日誌書いて、明日何するか考えなきゃ……  そう思いつつ、「もうちょっとだけ休憩~……」と軽く目を閉じた。 『――兄さんが可哀想だわ……大人なんだからさっさとくっつけばいいでしょう?……』  適度な疲れと眠気に襲われてウトウトしているオレの頭の中に、莉奈の言葉が浮かんでは消えていく。  由羅が可哀想……か……そうだよな、いい加減ハッキリしろって感じだよな……  でもさぁ……莉奈に言われなくてもオレだってずっと考えてるんだよ……  オレは一体由羅とどうなりたいんだろう……?  以前はいつか由羅に恋人ができたとしても、その方が莉玖のためにもいいだろうって思ってたし、だからむしろ由羅はちゃんと女の人と付き合った方がいいだろうと思ってたし、そうなったらベビーシッター兼家政夫をやめればいいだけだって思ってたけど……  でも今は……由羅の隣に他の誰かがいるのを想像すると、なんか胸がギュッてなって、モヤモヤする。  これが嫉妬とか恋とかいうやつなのかはわかんねぇけど、好きか嫌いかで言えば……好きだ。  だけど……じゃあさっさと付き合えばいいと言われても――……   ***

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