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働くパパはカッコいい? 第351話
「――……の?おいどうした?」
あれ?由羅の声だ……
あぁ、なんだ……夢か。
「具合でも悪いのか?」
夢の中で由羅が優しくオレの額や頬に触れた。
「熱は……なさそうだな。綾乃、こんなところで寝ると風邪引くぞ」
わかってるって……由羅が帰って来るまでには起きるし……
薄目を開けたオレは自分の思考になんとなく矛盾を感じつつも、夢ってそんなもんだよな!とひとりで納得してまた目を閉じた。
「綾乃?聞いてるのか?」
「ぅむぅ~……」
オレは返事の代わりに小さく唸ると、頬を撫でていた由羅の手を掴んだ。
でっかい手……
由羅の手をにぎにぎしていたオレは、いつの間にか頭で考えていた言葉を口に出していた。
「オレ……ゆらのキスはイヤじゃねぇんだよな……」
触れられるのも……抱きしめられるのも……本当は……
「……なら、綾乃は何がイヤなんだ?」
「う~ん……えっち……?」
「っ!?……つまり私に抱かれるのがイヤということか……?」
「じゃなくて……こわいんだよぉ……だってさぁ……」
予想よりも全然由羅のユラさんがデカかったし……あんなの絶対オレの尻が裂けちゃうし……でもオレには尻しかないから……無理だし……オレは男だし……するのはイヤじゃないけど……でも痛いのイヤだし……だから――……
「なんというか、支離滅裂だな……結局、綾乃は私に抱かれてもいいのか、イヤなのかどっちなんだ……」
由羅はちょっと困惑気味に呟きながらオレの隣に座った。
「だから……ゆらがイヤなわけじゃ……なくて……でも……」
えっちが怖いとか……そんなこと本物の由羅には絶対言えない……
だからその……オレとしては……由羅のユラさんがもうちょっと小さくなってくれればいいな~って……そうしたらオレだって……!
「ゲホゲホッ!……待て綾乃!……すまないが、それは私にはどうしようもないぞ!?」
由羅が急に咳き込んでオレの言葉を遮ると、笑いを堪えるような困ったような何とも言えない微妙な顔をした。
「え~……なんでだよぅ?」
「無理なものは無理だ!だいたい、綾乃が可愛いサイズなだけで私のが特別大きいというわけではないと思うんだが……?」
あれ?今オレの大事な息子さりげなくディスられた?
「ちっちゃくて悪かったなぁ!」
「悪いとは言ってない。私は好きだ」
「なん……って、あれ?……由羅?」
ムッとして由羅の胸倉を掴んだオレは、ようやく違和感に気がついた。
***
あれ?これって夢じゃなかったのか!?
思わず目の前の由羅の頬をムニっと引っ張る。
「……いひゃい !こら綾乃。なぜ私の頬を引っ張った!?」
「あ、ごめん。本物か確かめようと思って。あの~……由羅はいつからそこに?」
「いつからって……さっきからずっとだが?」
「……え、ずっとって……待って!?オレの寝言どこから聞いてたんだ!?」
っていうか、オレどこから口に出してた!?どこからどこまでが夢!?
「まさか今までのが全部寝言だと?それはある意味スゴイな」
「いやいや、感心するとこじゃねぇし!で、どこから聞いてたんだよ!?」
「そうだなぁ~……たしか「由羅のことが大好きだ」という所からだな」
「うそだあああっ!そそそんなこと言ってねぇし!」
……え、言ってないよな?な!?
「覚えていないくせに否定だけは早いな。まぁ似たようなことは言っていたぞ?それより、綾乃……誰かになにか言われたのか?」
「え?あ~……えっと……オレがいつまでもグズグズしてるから、ゆらがかわいそうだって……りなに……」
「莉奈か……まったくあいつは余計なことを……」
由羅は上を見上げてちょっと顔を顰めると、オレを抱き上げて膝に乗せた。
「な、なんだよ!?」
オレが動揺して逃げようとすると、由羅は軽く抱きしめて「大丈夫だから落ち着け」と宥めてきた。
何が大丈夫なのかまったくワカラナイ!
オレが寝ぼけてマヌケにもご本人様相手に赤裸々に喋ってたってことしかわからないし、それが一番大丈夫じゃないからっ!
「綾乃、莉奈に言われたことは気にするな。あいつはこうやってアタフタするおまえを見て面白がっているだけだ」
「で、でも……我慢させてるって……」
「我慢はしていない。……と言ったらウソになるが、そんなに我慢しているわけでもない」
「なにそれ……どゆこと?」
「私は今の状態でもそれなりに満足しているということだ。触れたい時には昨夜のように遠慮なく触れているし……」
……あれ?たしかに、考えてみれば由羅って結構やりたい放題してるじゃねぇか……
「それは心外だな。やりたい放題していいならとっくに抱いているに決まっているだろう?」
いや、そんな真顔で言われても……
「私は綾乃がその気になるまで待つと言ったはずだぞ?もちろん抱けるなら今すぐにでも抱きたいが……」
「オレがずっとその気にならなかったらどうすんだ?」
「私が触れるのはイヤじゃないのだろう?それならやりようはいろいろある。溜まったままだとお互い健康に悪いから適度に発散させるのは必要だしな。だから……綾乃が本当に私に抱かれるのがイヤなら、別に挿れなくてもいい。私の……アレのサイズに関してはどうしようもないからな……」
あ、ヤバい、由羅が気にしてる!?
オレだってさすがに本気で小さくしてほしいだなんて思ってねぇよ!?
でも、あの……うん、なんていうか好き放題言ってごめんなさいいい~~!
「えっと、えっと……そうだ!その……やりようってなんだ!?」
テンパったオレは急いで話題を逸らした。
「それはまぁ追々……な」
由羅は意味深に微笑むとオレの頭に軽く口付けてもう一度軽く抱きしめてきた。
「とりあえず、今日はもう寝ろ」
「……そうしま……しゅ……」
いろんな意味で精神的なライフが完全にゼロになったオレは、起き上がる気力もなくそのまま眠りに落ちたのだった。
***
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