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第19話

「え?商店街の喫茶店に、一緒に行って欲しい?」 結局、良い案が浮かばず、創さんにお願いしてみた。 コーヒーを飲んでいた創さんは、驚いた顔で俺を見て呟くと 「僕が行っても良いのか?」 と、不思議そうな顔をして聞いて来た。 「え?何でそんな事を聞くんですか?」 今度は逆に俺が質問してしまうと、創さんはコーヒーカップに視線を落とし 「その……あの美人の店主さんが好きなんだろう?前に彼の料理を捨てようとして、激怒したじゃないか……」 と、言い出した。 「はぁ?何でそうなるんですか?違いますよ!俺が好きな人は、創さんだけです」 そう叫んだ俺に、創さんは真っ赤な顔をして 「ば!……もう、良い!」 と、慌てて席を立とうとした。 俺は創さんの腕を掴み、引き寄せて抱き締めながら唇を奪う。 「んっ……」 舌を差し込み、キスをすると創さんの腕が俺の首に回される。 「は……じめ……」 甘い創さんの声にクラクラするけど、創さんの下半身は全く反応しない。 唇が離れ、上気した顔が色っぽくてムラムラ……もとい、クラクラする。 その時、創さんの手が俺の下半身に伸びた。 「はじめ……、勃ってる」 そりゃ~、好きな人とあんなキスしたら……って思うけど、俺は創さんの手を下半身から引き剥がして 「トイレで抜いてくるんで……」 って答える。 すると創さんが 「抱いて上げられないけど……、はじめなら抱かれても構わない」 なんて言い出した。 好きな人にそんな事を言われて、普通で居られる奴が居たら会ってみたいもんだ。 「創さん……」 再び唇を重ね、シャツのボタンを外して首筋に舌を這わせる。 …………でも、創さんの身体が段々強ばり震え出した。 ……まだだ。 必死に俺に応えようとしてくれる創さんの気持ちだけ頂いて、抱くのも抱かれるのも待とうと決めた。 そっと創さんの身体を抱き締めると 「はじめ?」 って、不思議そうな顔で俺を見上げた。 「創さんの心と身体が、俺を受け入れられるようになるまで待つから……」 と伝えると、創さんは涙を浮かべて 「ごめん……」 そう呟いた。 申し訳なさそうにする創さんに微笑み 「なんで謝るんですか?創さんは悪くないですよ」 と言って頭を撫でると 「はじめ……、こんな欠陥品の僕で良いのか?」 そう言った後、俺の身体に抱き着いて 「……でも、ごめん。僕はお前と離れるなんて、出来ない」 と呟いた。 俺はその言葉だけで充分だった。 創さんの身体を強く抱き締めて 「ゆっくり……、俺達のペースで歩いて行きましょう」 そう答えた。

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