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第33話~二人だけの夜~

「はじめ、覚悟は出来た?」 俺達は今、何故か布団の上で向かい合って正座している。 星空観察から戻り、俺、どうしてもそのまま部屋に入れず、一旦落ち着く為に風呂に入った。 ぬるま湯状態の風呂で、身体と頭を冷やす。 俺はさっきまでの出来事を思い出し、あそこでああは言ってたけど、いざとなったらダメになるかもしれない! いや、ダメになるに決まってる。 俺にハルさんのような色気も無ければ、友也のような愛らしさも無い。 もし、いざとなった時、創さんの『創さん』が「ごめんなさい」するかもしれない。 そうなった時、笑顔で 「大丈夫ですよ!気にしないでください」 って、そう言える準備(覚悟)をしておこう。 冷めた湯船につかり、頭から湯船に潜り込む。考えれば考える程、俺と創さんの絵面が想像出来ない。 ぬるいお湯の中で、頭を冷静に戻す。 『ザバ』っと一気に湯船から上がり、シャワーで身体を洗い流してパジャマに着替えて離れへと戻る。 もしかしたら、昨日みたいに寝てるかもしれないと俺は意を決してドアを開けた。 すると部屋の電気は着いていて、創さんが布団にあぐらをかいて座って本を読んでいた。 「はじめ、随分長かったな」 本から顔を上げた創さんに、思わず苦笑いを浮かべる。 「寝てなかったんですね」 そう言いながら部屋に入る俺に 「はぁ?お前、何言ってんだよ?さっき言った事を忘れたのか?」 と、創さんが俺の顔を睨み上げる。 しばらく俺の顔を睨み上げた後、創さんは小さく溜め息を吐いて 「大方、風呂場でウジウジ悩んでたんだろうな……」 そう呟くと 「大体、こんな物を持ってるなら、さっさと出しとけよ」 と言って、俺が某市から取り寄せたオーガニック〇ーションをドンっと音を立てて枕元に置いた。 「そ…創さん!何でそれ……」 慌てる俺に、創さんは真顔で 「いや、お前の部屋をちょっと物色したら出て来た」 って答えた。 いや!ちょっとじゃないよね! 俺、隠しておいたんだからさ! と、心の中でクレームを言っていたが、ふと気付いた。 ……て事はだ。 使ったことないけど、サンプルって送られて来たお一人様用のあれも見られたって事だよな。 ショックで固まっていると 「どうした?……あぁ、一緒に入っていたオモチャの心配か?安心しろ。未開封だったんで、戻しといた」 と、シレッと言われて赤面する。 そしてハタと気付いた。 まだ、ローションも未開封な筈だ。 「だったら、それも未開封なんだから戻して下さいよ!」 そう叫んだ俺に 「はぁ?これからヤルっていうのに、これが無いとお前がキツいぞ」 と、あくまでも冷静に返されてしまう。 「創さん、言い方!!」 真っ赤になってずっと叫んでいる俺に、そっと創さんの手が頬に触れた。 「はじめ、もう覚悟は出来た?」 囁くように言われて、創さんの顔が近付いて来る。 ギュッと目を閉じると、唇に創さんの唇が触れた。 久しぶりの創さんの唇の感触にうっとりしていると、顎を掴まれて 「はじめ、舌出して……」 と、甘く囁かれる。

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