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7話 仁山翔太
学級委員、成績優秀、運動神経も良く、友達も多い。
外面だけを見れば、俺は十分な高校生と判断されるだろう。
兄貴は素行が悪いが勉強はそれなりに出来て有名な大学に一発受かった。
それもあってモテた。
兄が持ち帰った人の家では誰かの喘ぎ声が聞こえる。
幼少期に親が離婚して父も仕事で家にいない、そんな家庭で愛されたいと願った兄貴がこう育ったのは仕方ないと思えた。
ーーこんな環境からか誰か一人を心から愛してみたいと思っていた。
学級委員だからといって仕事を押し付けられることもしばしばあった。
ノートや課題の回収から面倒臭い雑事の手伝いまで多岐に及んだ。
(ここで死んでも教師にはならないと誓った)
同じクラスに立花といういつも髪の毛で顔が見えない奴がいた。
最初は勉強も運動もまあまあな奴だと思ったら、勉強も運動も結構出来るので驚きだった。
化学と数学は毎回立花に負けたので悔しく感じていた、というのもあって彼のことが気になっていた。
髪の毛からたまに見える素顔は整った顔で、どこかで見覚えがあった。
ある日には、ノートの提出が遅れたら「ごめん」と言って飴玉をくれて、根暗そうに見えたけど人嫌いでは無いと分かった。
見れば見るほど彼がクラスの中で浮いているのが些か謎だった。
気づいたら彼を目で追ってしまう存在だった。
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