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10話
優位に立てるとーー外から見たら圧倒的に負けだがーーと思った瞬間に心が軽くなった。
前戯も何も無いから血が出るし、行為自体は痛くて最悪だった。
「ほら、啼けよ!淫乱!」と田中が騒いでいた。
「下手だから無理。痛いし、もしかして童貞なの?」
「うるせぇよ。てめぇが不感症なだけだろ」
行為の最中、死んでくれと心の中で何度も呪った。
僕は初めて反撃したいと思った。
といっても、何も出来ずに強姦されるだけだ。
仁山は、‘ 脅し’という名目のくせに前戯は優しいし、事が終わるとまた優しかった。
事の始まりが始まりなだけに優しいという言い方は違うかもしない。
ただ、この時の僕には優しかったと思った。
全身痣だらけで尻は痛くて意識が朧げになっている時になって重たい扉が開かれた。
薄れゆく意識の中でうっすら扉の方を見たら仁山が立っていた。
「流石にこれはまずいぞ。犯罪だ」
そう言って、田中の腹を殴っていた。
田中と体を離されて完全に気を失ってしまった。
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