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とある日の黒沢俊一。 2
「枕でもやっているんだろう」
「顔が良い奴は得だな」
「なんでも専務のペットだとか」
黒沢が部長についたばかりの頃
そんな陰口をいう連中もいたが、全く気にしてはいなかった。
それどころか連中が話している中に入っていき
「おや、先輩方。楽しいお話ですか、僕も混ぜて頂きたい。 が、今日も忙しくて」
「でも、そんな暇があるなら1件でも多く新規でも取ってきたらどうです?」
と笑顔で言ったほどである。
悔しければ結果を出して奪ってみろ、この椅子ならくれてやる、但し、出来るのであればな。
暗にそう言っているのである。
自分より年上で且つ仕事ができないなど、そんな連中に何を言われようと関係ない。
仕事ができるかできないか、それだけで十分だ。
黒沢はそんな男だ。
枕をやっている、という馬鹿げた噂が立つことも黒沢は理解していた。
彼は容姿が整っている。
純日本人だが日本人離れした顔立ち、スラリとした等身はハリウッドスターのようだ。
その為にそんな噂が立ってしまった。が、噂は噂でしかない。
言いたい奴には言わせておけ。
黒沢俊一という男はそういう人間である。
常に己が信念の下に生きている。
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