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とある日の黒沢俊一。 6
しまった、という顔の高橋とは反対に黒沢は口の端を上げ、笑みを深めていた。
実に悪い顔である。
「ほぅ。俺の手を見ていたのか。何故だ、説明を乞おうか高橋クン?」
こういう時の黒沢はとことん意地が悪いのを高橋は知っていた。
普段はしないミスをした時の部下を責める彼の顔である。
無論、理不尽に責めることはしない黒沢だが納得できないミスに関しては面白半分で意地悪く責めるのだ。
勿論人は選んでいるし、フォローもする。
故に『黒沢部長の意地悪』を不快に思う部下は少なく、彼に着いてくる。
高橋は観念したように話した。
「うぅ…。部長の話を聞いていて何となく、部長の手元に目がいって、そしたら食べ方が綺麗だなって。部長、手も綺麗で、それで、つい」
しどろもどろになりながら顔を赤くして話終えた高橋は、大きな体を小さくさせていた。
その様子を黙って聞いていた黒沢は
高橋の真っ直ぐな言葉に驚いたがそれも一瞬で
何か思いついたように再び口の端を上げた。
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