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とある日の黒沢俊一。 8
顎を掬うような形で親指で下唇を弄ぶ。
幾度かフニフニとした後、今度は人差し指の甲で唇をなぞるように撫でる。
その手つきは愛撫を思わせるほど、エロティックだ。
その間、黒沢は高橋から目をそらさず
ただ笑みを浮かべ、手を滑らせていた。
高橋はというと、可哀想になるほどに赤面し震えている。
憧れの黒沢部長が大人の色気をもってして官能的な手つきで自分に触れている。
何も考えられない。高橋はショート寸前だった。
そんな部下を見ながらも笑みを保っているとは、まして楽しそうとは意地の悪い上司である。
しかし、そろそろ止めてやらねばな
黒沢は漸く満足したようで
高橋の頬をひと撫でして手を離した。
「ふ、高橋行くぞ」
黒沢の一言にハッと我に返った高橋は残りの生姜焼きを口に入れてしまうと、先に店を出ようとする黒沢を追った。
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