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とある日の黒沢俊一。 11

書類の山に終わりが見えた頃。 ちょうど打合せの時間となった。 「………」 資料を手に黒沢は考える。 部屋を出、フロアを見渡すと高橋を呼びつける。 「高橋」 自分のデスクで作業をしていた高橋はご主人様に呼ばれた犬のように元気よく返事をし、黒沢のもとへ。 「お前、急ぎの仕事はあるか」 「いえ、特には。今日はあと報告書くらいです」 黒沢の意図が読めず頭上にクエスチョンが浮かぶ。 「よし、行くぞ。 着いてきなさい」 それだけ言って先にフロアを出る黒沢。 全く理解が追いつかないままに高橋は黒沢を追いかける。 「ちょっと待ってくださいよー」 開発部への道すがら説明をしていく。 「開発とは仲良くしておいて損はない。 いい機会だから参加しろ。俺の隣にいるだけでいい」

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