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とある日の黒沢俊一。 12
開発部では白衣を着た研究者達が試験管やビーカーなどを手に実験を行っている。
開発部の部長もその中にいた。
実験室の扉を叩くとこちらに気づいたようで作業していた手を止め、出てきてくれた。
「俊一!」
黒沢を下の名前で呼びながら、男は抱きつく勢いで出てきた。それをひらりとかわしいなす黒沢。
「瀬名、やめろ」
「ちぇー ケチー」
男、瀬名瑞姫
黒沢とは同期で大学の同期生である。
「俊一、どうしたの。珍しいね、俺に会いに来たの?」
「違う。いや、違わんが、呼んだのはお前だろう。 あと、職場では名前で呼ぶな」
相手の勢いに黒沢は一気に疲れたようで、それが顔に出てしまっている。
そんな2人の様子に戸惑う高橋はたまらず声をかける。
「あ、あの、黒沢部長」
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