それでもお互いに恋人になる気がなかったのは 貞操観念がどうかしていたからだろう。 それと、ただの友人としていたいという気持ちがあったからなのかもしれない。 何にせよ、瀬名は黒沢の数少ない気兼ねなく話せる友人であった。 (あいつもいい加減遊ぶのをやめたらどうなんだ) 今まで散々遊んできた自分は棚に上げ、友人を心配した。 時刻は定時を少し過ぎた頃。 仕事を片付けながら、ある青年のことを思った。 彼は今頃何をしているだろう 最後に会ったのはいつだった？ そこで携帯が震えた。 確認すると1件のメッセージ。 差出人は黒沢が絶賛片想い中の相手である。 今さっき思っていた相手がディスプレイに表示され、ドキリとする。 «こんばんは。お仕事お疲れ様です。 黒沢さんはまだお仕事かな？ もう終わった？ 僕はこれから仕事です。 あまり無理のないように頑張ってください。 涼»