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とある日の黒沢俊一。 18

少しだけ残っている仕事を片付けながら 次に想い人に会えるのはいつだろうかと思っていると部長室の扉が叩かれた。 「…入れ」 面倒事はごめんだぞとおもいながら入室を許可する。 「失礼します」 入ってきたのは高橋だった。 「どうした。提出し忘れか? 何にしても手短にな」 報告書の類は既に受け取ったはずだ。 それにいつもなら定時でしっかり上がっている高橋がこんな時間に珍しい。 とは言っても定時を1時間ほど過ぎただけだが。 自分が部長に就任してからは繁忙期などやむを得ない場合にしか残業をさせていない。 翌日にできることは翌日に。 個々の能力を見極め、仕事を振り分け効率を上げる。それが自分の、上司としての仕事だと黒沢は思っている。 達成すればそれを褒めてやる。できなければできるようサポートをする。 そうすることで部下の士気は上がり、部署の業績も良くなる。 返答を待つも一向に喋る気配のない高橋を不思議に思い声をかける。

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