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とある日の黒沢俊一。 20
思わぬ部下の変化に黒沢は面白いことになったと思う。
「ふむ。腐れ縁、というか。大学からの友人ってだけだ」
それだけではないが、というのは黙っておいた。
「それだけ? ただの友人、ですか?」
「ああ」
そう答えてやると不安げな表情から一変し
ぱぁぁと分かりやすく明るい表情になった。
こういう顔を見ると可愛いやつだと思う。
下手をすれば抱いていたかもしれない。但し、自分より背が低ければ、だが。
いくら可愛かろうが、自分より背が高い奴を抱く気にはなれない。それに、今自分には想い人がいる。
そんなことをしては彼にも高橋にも不誠実だろうと思う。
昔はそんなこと思いもしなかっただろうに、変わるものだな。
人を一途に想うことも全て涼くんに出会ってから知った。
高橋がもし本当に瀬名のことが好きなら良いことだと思うし、こんな風に想われる瀬名が少し羨ましい。
「そうなんですね。…良かった。それだけ聞いておきたくて。それじゃあ、お疲れ様です! あ、これどうぞ!」
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