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ここが、スタートライン 2

「おはようございます。俊一さん」 涼くんかと思い開けた玄関の先に立っていたのは 俺の 「か、母さん!?」 母親だった。 「何です、化け物でも見たかのような顔は」 俺とよく似た顔で笑う母を前に言葉も出ない。 それはそうだろう。 実家を出てからというもの、あまり家に帰っておらず、仕事を理由にここ数年は盆はおろか正月にすら帰っていない。 ごく稀に連絡は来るが何年も顔を見ていない母親が目の前に現れれば まして突然となっては、化け物を見たような顔にもなろう。 しかし、何か急用でもあったのだろうか。 何の連絡もなく来るなど、この人らしくない。 この貼り付けられたような笑み、オーラが笑っていない。 これは相当怒っている……。 「い、いえ。とりあえず、中へ」 こういう時の母に、俺は逆らえない。

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