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ここが、スタートライン 4

「げほ、げほ。 はぁ、……いませんが」 母の意図が読めず、それがどうかしたのかという意味を含めて答える。 そもそも何かあって来たんだろ。 態々、余所行きの着物まで着て。 母は普段から和服を好んで着ているが 息子の家に出向くのに正装紛いな格好なんて 何か大事な用があるとしか思えん。 「あなたのことだから、そうだろうと思っていましたけど。本当に仕方の無い息子ですね。 母は心配ですよ」 何とでも言ってくれ。 俺は今涼くんを落とすので精一杯なんだ。 そこで、と母は続ける。 「あなたもいい歳なのだから、早く結婚しなさいと思って。相手もいないようだし、いい頃合いでしょう。今日はお見合い話を持ってきたんですよ」 「……は?」 そう言って母は鞄からお見合い写真らしき物を取り出した。

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