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ここが、スタートライン 7

母の出て行った扉を見つめ、深い溜息を吐く。 どっ、と疲れが出たな。 息子の意見など聞く気は全くないだろうに 何故態々来たんだ、あの人は。 我が母ながらワンマンが過ぎる。 見合いは面倒だが、逃げることのほうが難しいのを知っているので、諦めてその場だけ凌ぐことにする。 その後は、断ればいいだけだ。 しかし、俺から断る、というのは少々気が引けるな。 写真の彼女の気持ちを傷つけてしまうかもしれない。 見合い写真をチラリと見る。 …………似ている。 似ているんだ。あの子に、涼くんに。 涼くんのほうが美人だし、可憐だ。が、 黒髪で色白なところとか涼しげな目元とか雰囲気がどことなく涼くんに似ている。 こんな子を傷つけることなんて出来るだろうか。 チラリと見たつもりがいつの間にか写真を手に取っていてまじまじと見ていた。 この着物、涼くんにも似合いそうだとか髪留めが可愛いとか女装した涼くんもいいなとか考えているとインターホンが鳴らされた。 今日はよく来客のある日だ。

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