72 / 106
ここが、スタートライン 8
俺は居留守を決め込むことにする。
もう一度鳴る。
煩い。俺は今留守だ。
何度か鳴ったが留守と分かったのか静かになる。
諦めたか。
よし、と俺はソファは移動し見合い写真をテーブルに置いて寝転がる。
すると玄関の方でガチャガチャと金属の擦れる音がした。
先程の奴かと目を閉じたまま身構える。
程なくして鍵が解錠された音がし、人の気配が近づく。
リビングのドアが開かれそれがそっと入ってきた。
「留守なのかなぁ……っているじゃん!あ、寝てる」
それは残念そうに声を出して
俺がいることに気づいて寝ていると思い小声になった。
それ、声の主は涼くんだった。
母の訪問にすっかり忘れていたが
今日は本来涼くんと過ごす日であった。
起きているがせっかく寝ていると勘違いしているので、暫くこのままでいよう。
ともだちにシェアしよう!