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ここが、スタートライン 8

俺は居留守を決め込むことにする。 もう一度鳴る。 煩い。俺は今留守だ。 何度か鳴ったが留守と分かったのか静かになる。 諦めたか。 よし、と俺はソファは移動し見合い写真をテーブルに置いて寝転がる。 すると玄関の方でガチャガチャと金属の擦れる音がした。 先程の奴かと目を閉じたまま身構える。 程なくして鍵が解錠された音がし、人の気配が近づく。 リビングのドアが開かれそれがそっと入ってきた。 「留守なのかなぁ……っているじゃん!あ、寝てる」 それは残念そうに声を出して 俺がいることに気づいて寝ていると思い小声になった。 それ、声の主は涼くんだった。 母の訪問にすっかり忘れていたが 今日は本来涼くんと過ごす日であった。 起きているがせっかく寝ていると勘違いしているので、暫くこのままでいよう。

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