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ここが、スタートライン 15
「良かった。 日時は決まっているの?」
俺に抱きついたまま上目遣いでそんな事を口にする。
可愛いな。
「いや、母が後から連絡すると言っていた。 どうしてだ?」
猫や犬にするように涼くんの頭を撫でながら答えてやる。
涼くんは気持ち良さそうに目を細めている。
こうしていると本当に猫のようだ。
彼をこう出来るのは俺だけだったら良い。
ベッドで甘く溶かせるのも、甘やかせるのも
俺以外にも居ると思うと薄暗い気持ちになる。
「んー? 気になっただけー、決まったら教えてね」
上目遣いで首を傾げる涼くんにこの気持ちを知られるわけにはいかないと、曖昧な笑みを向け分かったと短く答えた。
ひとしきり俺にじゃれついてすっかり機嫌が良くなったのか涼くんは、するりと俺から離れてしまった。
「なんか泣いたり叫んだりしたらお腹空いちゃった。 黒沢さんもお昼まだだよね」
軽く作っちゃうねー
そう言ってキッチンへ行く涼くん。
エプロンをしている姿を見ると何だか新妻のようだ。
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