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ここが、スタートライン 16
料理をする姿を見ていると、この姿を毎日見たいと思うと同時に湧き出る薄暗い感情。
他の男、例えば店の客でお得意相手にも同じことをしているのではと思うと酷い嫉妬に襲われる。
自分の中にこんなにもドロドロとした感情があろうとは知らなかった。
俺にも人間らしい感情があることに驚く。
しかもこの年齢になって気づくとはな。
涼くんは良くも悪くも、俺に今までにない感情を開かせてくれる。
ぼんやりと涼くんの方を見ながら
やはりこの子と未来を共にしたいと思った。
どうにかして先方から振られるように仕向けなければ。
俺の思考は涼くんのことから見合いのことに変わっていった。
「はーいできたよー。休日のお昼の定番焼きそば! 今日は海鮮塩焼きそばにしてみましたー」
香ばしい匂いと共に俺の耳に心地好い声が降ってきた。
こうして見ると本当に嫁だな。
料理上手で美人で俺にとって完璧な嫁だと思って、知らずに顔が緩む。
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