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ここが、スタートライン 24

彼女は赤面し怒りなのか羞恥なのかで震えていた。 そして涼くん(仮)はいまいち理解の追いつかない俺の手を取り立たせ 「行くわよ、俊一さん」と微笑んで部屋から連れ出した。 背後から母が叫んだが、その制止など聞かず俺たちは走って外へ出た。 途中で俺が手を取る形で駐車場まで来た。 とりあえず落ち着いて話せる所、と車を走らせる。 久しぶりに全力で走ったので二人共息を切らし汗だくだ。 車内には沈黙と二人の荒い息だけが流れる。 暫く車を走らせると見覚えのあるホテルが見えた。 それはかつて俺と涼くんが出会ったホテルだった。 家に帰るより近いし何より早く話がしたかった。 俺はそこへ入ることにした。 部屋に入り、早速切り出す。 「君、涼くんだろう?」 俺に背を向けていたその子が微笑みながらこちらを向く。 「ふふ、そうだよ。 他に誰がいるの?」 声も涼くんのそれに戻っていて、確信した瞬間安堵した。

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