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ここが、スタートライン 26

涼くんが何か言ったようだが どうにも遠くに聞こえてしまって何も言ってやることが叶わない。 涼くんの目を見つめ返すだけ。 女装の所為か別人を見ているようだ。 するとみるみるうちに赤面していく涼くん。 「な、何か言ってよ!」 顔を真っ赤にさせながら大声を出す涼くんに俺もハッとする。 「す、すまん。あ、と、何だったかな?」 やっとの事で聞き返すと また言わせるのかとでも言うような顔で目を見開く涼くん。 数拍置いた後、さらに顔を赤くして泣きそうになりながら涼くんは口を開く。 「っだから! 好きなんだよ!」 今度こそしっかり俺の耳に届いた言葉は 俺を驚かせるには十分だった。 好き? 何を? 誰が? ……誰を? 「何が?いや、誰が、誰を?」 やっと出た言葉は率直な脳内の言葉だった。 涼くんは涙目だったのが、涙が流れ落ちてしまっている。 そしてゆっくりと嗚咽を交えて、しかしはっきりと涼くんは言葉を紡ぐ。

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