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バレンタイン編 2

賑わう街中を抜けながら、黒沢はふと思った。 俺の可愛い恋人はくれるのだろうか。 いや、彼も男だし貰う側だろう。 しかし恋人の日であるし……。 そもそも男同士の場合はどうすれば。 …………。 考えても埒が明かないと結論に至った黒沢は 翌日の休日、デパートに赴いた。 バレンタインのコーナーに行けば 女子、女子、女子の波。 ピンクで彩られているその一帯は 男性である黒沢には足を踏み入れることを躊躇われた。 ここまで女子が群がっているとは自分の認識は甘かったようだ。 彼女たちのチョコレートを選ぶ目は獲物を狙うハンターのそれ。 ここは、戦場だったか…? そう思わずにはいられなかった。 だが、ここで臆していたのでは恋人への贈り物を買うことが出来ない。 黒沢は意を決して戦場へ足を踏み入れた。

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