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バレンタイン編 4
バレンタイン当日。
平日の為、黒沢はいつも通り出社した。
案の定、受付嬢からチョコレートを渡された。
が、黒沢は受け取らなかった。
チョコレートを渡されるやいなや
「すまない、今年は本命がいるんだ。その人からしか受け取らないと決めている。 だから、それは受け取れない。本当にすまない。 ありがとう」
と丁寧に断っていた。
デスクに置いてある分に関しては
分かる範囲で返して回った。
年に一度、バレンタインに乗じて想いを伝えようとする彼女らを思えば申し訳ないと感じたが
自分は今、恋人がいる身。
それこそ不誠実だと思った。
彼女らに対しても、恋人に対しても。
けれど、気持ちだけは受け取り、それに対して礼を述べ、その上で断った。
贈る側として経験してみて初めて、毎年やっている女性の気持ちが分かったと同時に尊敬した。
本当に、世の中の女性は大変だな。
黒沢は1日の大半をその対応に追われた。
他の男性社員は毎年のことか、と呆れと羨望と面白みを綯い交ぜにした視線を送っていた。
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