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バレンタイン編 10
「涼くん」
「はい」
黒沢の真剣な表情に若干の不安を感じながら、涼も真剣に聞こうと目を合わせる。
ひと呼吸おいて口を開く。
「涼くん、君が好きだ」
何を言い出すのかと思えば突然の告白。
涼は何を今、と混乱した。
「え? うん、知ってる。僕も好きだよ?」
それでも黒沢は続ける。
「それで、だから、俺も君に渡したいものがある」
そういうと立ち上がり、リビングを出てしまった。
少しして戻ってくると
可愛らしくラッピングされた箱を持って黒沢は
涼の前へ跪いた。
「これを、君に」
片膝をついてそれを渡す様は宛ら 姫に忠誠を誓う騎士のようだ。
下から見上げてくる恋人の姿に胸を射抜かれ、涼はそっと受け取った。
「ありがとう、俊一さん」
そう、微笑む涼の姿に黒沢もホッと胸を撫で下ろし、元の席に戻る。
「男同士だからどうするべきか悩んだんだが、まさか君からくれるとは思わなかったから」
驚いたよ。
そう言いながら黒沢は食事を再開する。
うん、先程よりしっかり味が分かる。美味しい。
恋人の美味な手料理を堪能していると
今度は涼が俯いてしまった。
「どうした?」
お気に召さなかっただろうかと不安になる。
「いや、ただ、僕達同じこと考えてたんだなって」
「僕も最初は悩んで。でもこういうのって性別とか関係ないよなって」
貰った箱を愛おしそうに撫でながら
涼は黒沢を見つめ、微笑む。
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