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第一章・4
「……はぁ、おいしい」
お茶が刺激になって吐くかもしれない、と心配していたが、杞憂だった。
ハチミツの溶かされた甘いカモミールティーは、滋養となって真輝を癒した。
「良かった。少し、落ち着かれましたか?」
「白洲くん。君、暫くここにいてくれないかな」
「え?」
「君の香りが、私の心を鎮めてくれるんだ」
沙穂はマスターの許可を得て、真輝の席に張り付いていてくれた。
「おそらく、シャンプーと石鹸と、カッターシャツの香りです」
「君はシャツを毎日洗うかい?」
「はい。お客様の前に出る以上、清潔でなくてはなりませんから」
「それは良い心がけだ」
カモミールティーを一口、また一口と飲むたびに、真輝は元気を取り戻していった。
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