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第二章・2

 気分の悪さを払拭したかったので、真輝は屋敷についてから真っ直ぐにバスルームへ向かった。  自室のバスではない、大湯殿を使った。  かけ流しの温かな湯が、よどんだ澱を洗い清めてくれるようだ。  広い広い広い広いバスタブに一人で浸かり、沙穂を想った。 「彼には、もっときちんとした御礼をしなくてはな」  そうだ、と真輝は思い当たった。  10日後、この屋敷でパーティーを開くじゃないか。 「白洲くんを、招いてはどうだろう」  白いシャツに、黒のカフェエプロンの沙穂。  その彼に、真輝は脳内でフォーマルを着せてみた。 「……いいじゃないか!」  こうしてはいられない、と湯から上がると、真輝はバスローブ姿でティールームへ進んだ。 「アイスコーヒー、いや、ミネラルウォーターを」  専属のバリスタに、南極の氷を溶かした水を運ばせる。  まだ口内に残っている、あのハーブティーの余韻を、コーヒーで消したくなかったのだ。  そして、執事の武井(たけい)を呼んだ。 「今日訪ねたテーラーの傍に、『カフェ・せせらぎ』という喫茶店がある」 「はい、真輝さま」  仕事の早い武井は、すぐに手にしたタブレットで、その位置情報をつかみ、ホームページを開いた。 「そこに、白の胡蝶蘭を手配して欲しい」 「開店祝い、もしくはリニューアル祝い、でございますか?」  いや、と真輝はそこで口をつぐんだ。 (すべて話すと、この武井をひどく心配させることになるな)  体調不良で転がり込み、親切にしてもらったお礼、などと言えば、真輝はたちまち簀巻きにされて人間ドックに放り込まれるだろう。

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