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第三章・3

   エステで肌を磨き上げ、美容院で髪を整え、テーラーでスーツを買う。 「できれば、フルオーダーを君に贈りたいのだが」 「既製品で充分です。日もありませんし」  それでも袖や裾を直したりと、店主は気を配ってくれた。 「他ならぬ、源さまのお連れ様ですからね」  できる限りのことはいたします、と笑顔だ。 「ありがとうございます」  その言葉に、店主は少し驚いたように首を上げた。  しかし、すぐに笑顔で作業に戻った。 (何だったんだろう、今のは)  不思議な店主の仕草に、沙穂は首をかしげたが、訊ねるのもおかしな気がしたので黙っていた。 「二日後に、仕上がります」  店主の言葉に我に返った沙穂は、頭を下げた。 「ありがとうございます。では、その日に受け取りにうかがいま……」 「仕上がったら、屋敷へ届けてくれ」  突然、真輝が横から入って来た。 「かしこまりました」 「いえ、あの! 屋敷、って!? かしこまりました、って!?」  慌てる沙穂をよそに、真輝はそっと彼の肩に手を置いた。 「白洲くん、君は今日からパーティーの日まで、源の家で過ごすんだ」 「なぜです!?」 「作法を、身につけてもらう。君のためだ。社交界で、恥をかきたくはないだろう?」  あ、そういう……、こと?  何だか強引ではあるが、確かにマナーは身に着けなくてはならないだろう。  それでも沙穂は、キツネにつままれたような心地で、リムジンに乗り込んだ。

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