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第三章・5
「まずは、お茶でも飲んでくつろごう」
真輝は、ほんの2時間前にミネラルウォーターを飲んだティールームへ、沙穂をいざなった。
「お帰りなさいませ」
「トラジャを2つ頼む」
「かしこまりました」
バリスタの淹れたコーヒーは、沙穂を驚かせた。
(マスターより、おいしい)
彼の心を読んだように、真輝は言う。
「しかし、『カフェ・せせらぎ』のマスターも、いい腕をしている。あの香りは、並の腕では出せない」
「はい……」
「まぁ、このコーヒーをおいしく感じるのは、豆の違いでもあるからな」
「そうなんですね」
それはさておき。
「白洲くん。沙穂、と呼んでも?」
「え、名前で、ですか?」
「私のことも、真輝さん、と呼んでくれて構わない」
ぐっと親密さが増すだろう?
「それはそうですけど。なぜですか?」
「なぜ、だって? 答えは一つに決まっている」
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