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第四章 ありがとうという言葉
おいしいコーヒーは、沙穂を喜ばせた。
だが、真輝の『二人は恋人宣言』は、驚かせた。
(確かに素敵な人だな、って思ったけど)
まさか、源家の当主だったとは!
そして、こんな強引な方だったとは!
しかし、高校生の時に付き合っていたα少年も、やはりこんな風に強引ではなかったか?
(超・大金持ちなだけあって、強引の度合いがかなり高いけど)
きっと真輝さんにとっては、この世の人間すべてが、自分の思い通りになる従者なのだろう。
(パーティーまで、振り回されるんだろうな)
仕方ない、と沙穂は前向きに考える事にした。
普通では一生経験できない、源家での生活が味わえるのだ。
くじに当たったとでも考えて、楽しませてもらおう。
緋の絨毯が引かれた天井の高い廊下を、沙穂は真輝と共に進んだ。
「こちらが、君のために用意させた部屋だ」
ドアを開け中に入ると、沙穂は感嘆の声を上げた。
「うわぁ、素敵!」
三連アーチの窓、天井の縁廻しシャンデリア、鏡付きのマントルピース。
どれもが優美で、真輝の心配りが見て取れた。
「ありがとうございます。僕のために、こんな素敵な部屋を」
「うん。君をイメージさせる部屋ではあるな」
床には豪奢な織りの絨毯が敷かれ、その上には猫足のソファが置いてある。
そろりと、沙穂はそこへ腰かけた。
抜群の座り心地だ。
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