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第四章・3
「あの、真輝さん。僕たち出会ってから、まだ数時間しか経ってません。それに、夕方とはいえ、まだ日も高いし」
何だかんだと言い訳を並べる沙穂を置いて、真輝はネクタイを解き、ベストを脱ぎ、シャツのボタンを外し、ベルトを緩め、すっかり準備万端だ。
「脱がせて欲しい、だって? 手のかかる子だ」
「誰もそんなこと言ってません!」
「そんなところも、可愛い」
「……っ!」
ベッドの上で、真輝は沙穂の唇を塞いだ。
二人の唇の上には、同じコーヒーの香りが漂っている。
「ん……、んぅ」
優しくリップを食みながら、真輝は手早く沙穂のシャツのボタンを外す。
一つ、二つ、三つ。
すべて外している頃には、なぜかボトムのファスナーまで下ろされている。
その手際の良さに、沙穂は少し悲しくなった。
(やっぱり、こういうこと慣れてるんだな)
今まで、何人の人と関係を持ったんだろう。
(僕は、高校生の時に一人と付き合っただけなのに)
その彼も、卒業と共に沙穂の元を去って行った。
あれから2年が経つが、恋人は作らずじまいだ。
見た目の可愛らしい沙穂は、カフェの客に言い寄られることが度々あったが、全て断ってきた。
だけど、この人は。
真輝さんは……。
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