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第五章・5

「3年前の飛行機事故、って。もしかして、グリフォン航空の、ですか?」 「そうだが。覚えているのか?」 「僕も。僕の父も、その飛行機事故で亡くなったんです」  何だって、と真輝は沙穂の手を握り返した。 「母は僕が幼い頃に病気で亡くなりました。父は、商用で飛行機に乗って、それで」 「これも、運命か……」  実は、と真輝は続けた。 「私には子どもの頃から、不思議な力があってね。先見ができる、というか。予知とでも言おうか」  誰がお客様で来る、だとか。  テストでこの問題が出る、だとか。 「だから飛行機事故の時も、何か嫌な予感がしたんだ。専用機で行って欲しい、と両親に頼んだんだが」  そこまで言うと、真輝はうなだれてしまった。  可哀想な、真輝さん。  きっとそのことで、3年間自分を責め続けてきたに違いない。  沙穂は、握られた真輝の手をさすった。  ただ、優しくさすって、労わった。 「忌まわしい能力だが、今日もその力を発揮したようだ」 「今日、ですか?」  ああ、と真輝は顔を上げた。  その唇は、少しだが笑みをこぼしていたので、沙穂はホッとした。 「なぜか電車に乗って、歩いてテーラーへ行きたくなってね。いつもなら車なのに」  だが、おかげで沙穂に逢えた。 「君という、優しい人と巡り逢えた。きっと、私の両親が逢わせてくれたんだね」 「真輝さん」  真輝は、そこまで言うと、静かに沙穂へキスをした。

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