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第六章 悲しい過去ときらめく思い出
『明日は乗馬をしよう。楽しみにしていてくれ』
昨夜、こんな言葉を真輝から聞いたものだから、沙穂はすぐにでも馬にまたがる気分でいた。
「だのに……」
「はい、次は採血です」
午前中いっぱいかけて、健康診断を受けていた。
「今わかる範囲内では、異常なし。良かったじゃないか」
「少し痩せ傾向って言われちゃいました」
「それは見ただけで判る」
だから、どんどん食べて肉をつけたまえ、と真輝は昼食の一品を沙穂の皿へ寄せた。
「ホタテとエビのテリーヌ・サフラン風味・カルディナルソースだ」
「な、長い名前ですね」
「名前など。沙穂がおいしい、と感じてくれるかどうかが問題だ」
慣れないナイフとフォークで、沙穂はテリーヌを一口食べた。
「おいしいです!」
「良かった」
午後は約束通り乗馬をしよう、などと話し、二人はランチを楽しんだ。
「乗馬の前に、一度アパートへ戻ってもいいですか?」
「いいとも。私もついて行ってもいいかな」
「散らかってますけど、どうぞ」
「楽しみだ」
清潔なシャツを着るように心がけている、沙穂のことだ。
汚い部屋に住んではいないだろうが、真輝には興味があった。
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