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第六章・2
センチュリーに乗って、沙穂は自分の住まいへ戻った。
もちろん、真輝も一緒だ。
「このアパートの一室に、住んでいるのか」
「狭いので、驚きますよ」
鍵を開け、中へ入る。
そこは確かに狭いが、部屋の主の性格をぴたりと表していた。
無駄なものが一切なく、きちんと片付けられている。
そうかと思えば、鉢植えがあり、小さなぬいぐるみが置いてある。
「今、お茶を淹れますね」
洗濯機を回しながら、沙穂は湯を沸かし紅茶の準備をした。
「クローゼットを見てもいいか?」
「どうぞ」
真輝がのぞいたクローゼットには、着回しのきくシャツやジーンズ、コートなどが下がっていた。
「スーツが無いが」
「僕、Ωですし高卒ですから、普通の就職は諦めました」
紅茶の茶葉がガラスポットの中で踊り、部屋には良い香りが漂う。
そんな中で、沙穂は自分の身の上を語った。
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