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第六章・3
いい意味で、普通の家庭に生まれつき、両親の愛情を受けて育ったこと。
学校ではΩと言うことで、時々いじめられたこと。
母を亡くし、父が男手一つで17歳まで育ててくれたこと。
高校で初めてαの同級生と付き合い、身体の関係も持ったこと。
「そして父が事故で亡くなり、僕は独りぼっちになってしまいました」
「頼れる者はなかったのか? 祖父母や親類は?」
沙穂は、首を横に振った。
「父と母は、駆け落ち同然で一緒になったらしいので」
「それにしても、薄情なものだ」
幸い父の保険金や貯金のおかげで、高校卒業までは何とか勉強ができた。
だが、大学に進学して勉強するまでの余裕は、なかった。
「卒業して、家も売って。このアパートに引っ越してきました」
出された紅茶に口もつけず、真輝は話に聞き入った。
「それで、その」
「はい?」
「その、付き合った同級生というのは? 今でも連絡があったりするのか?」
いいえ、と沙穂は笑った。
「ご心配なく。卒業してから、一度も連絡はありません」
「そ、そうか。なら、いい」
照れ隠しに飲んだ紅茶で舌を火傷しながら、真輝は胸をなでおろしていた。
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