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第六章・5

「まさか、お屋敷の敷地内に馬場があるなんて……」  大人しい馬に跨り、真輝の富豪ぶりをまた見せつけられた沙穂は、本格的なブリティッシュスタイルのジャケットまで身につけている。 「真輝さん、もう少しラフな。ジャージとかでもよくないですか?」  こんな服装で騎乗するだけでも、恥ずかしい。  僕はまったく初心者なのに!  しかし真輝は、涼しい顔だ。 「まずは形から入らないと。服装を正せば、姿勢も正しくなるだろう?」 「それはそうですが」  沙穂の馬を引くトレーナーは、彼を見上げて笑顔だ。 「確かに、初心者にしては姿勢がいいですよ。背筋がちゃんと伸びてる」 「ありがとうございます」  あぁ、気持ちがいい。  青空に、緑の芝生。  鳥の声に、馬の足音。 「こんなにリラックスできたのは、久しぶりです」 「沙穂は乗馬に向いているのかもしれないね」 「でも、真輝さんは退屈じゃないですか? お一人で走ってこられませんか?」 (沙穂と一緒にポコポコ歩む方が、楽しいが……)  ここはひとつ、私の華麗なる乗馬テクでも披露するか! 「では、競技会用の馬場へ行こう」  そこで沙穂は、真輝の魅力の一つを知った。

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