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第七章 初めての夜
乗馬の翌日は野点。
野点の翌日は、ゴルフ。
ゴルフの翌日は、美術鑑賞……、と、沙穂は毎日を真輝と共に遊んで過ごした。
「真輝さん、お仕事はいいんですか?」
(今は沙穂とこうしていたいからな)
などという心の声は飲み込んで、真輝は澄ました答えを返す。
「たまには息抜きも必要だ」
「それに、僕はパーティーのための作法を身につけないといけないんじゃ……」
「大丈夫。今こうして私と話しているだけでも、着々と身についていっているよ」
不思議な、真輝さん。
(てっきり、所作やテーブルマナーを叩きこまれると思ってたけど)
遊ぶだけ遊んで、もう明日がパーティー当日、というところまで来てしまった。
「最後の作法だが……。沙穂、今夜君に触れてもいいか?」
「え! あ、そ、そうです、ね。ですよね」
すっかり忘れていたが、今の沙穂は真輝の恋人なのだ。
『恋人は、身体の相性も大切だからな。解り合うのは、早いほどいい』
出会って数時間後に、こんなことを言っていた真輝だ。
9日も待っていてくれた。
今度は僕が、この人に応える番だ。
「どうぞ。寝室で、お待ちしています」
「うん」
(どうしよう。ドキドキしてきた!)
その日は念入りにバスで体を洗って、沙穂は真輝を寝室で待った。
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