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第八章 パーティーの光と影
くれぐれも、と真輝は武井に念を押されていた。
「この宴席で白洲さまを、想い人、などとご紹介なさらぬように」
「解っている」
「でなければ、この武井、腹を切る覚悟にございます!」
「くどい」
全く、と真輝は長い回廊を歩いた。
「せっかくの気分が、台無しだ」
衆人の中、あの美しい沙穂をどれだけ自慢できるかと、ワクワクしていたのに!
武井に言われなくても、解っている。
「確かに私と沙穂は、愛し合っている」
昨晩は、身も心もぴったりと一つに重なったのだ。
愛し合ったのだ。
「今は、な」
恋多き真輝は、それだけ多くの愛を失ってきた。
この手をすり抜け落ちてゆく、恋人。
確かに沙穂は、素敵な子だ。
「だが……」
彼の心変わりを、真輝は恐れていた。
そしてその恐れは、自らにも向けられている。
沙穂を深く愛した分、その恐れも大きかった。
はしゃいできた分、反動が大きかった。
「またこれまでのように、失ってしまうのだろうか」
真輝は今、恋に臆病になっていた。
愛に、不信感を抱いていた。
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