48 / 98

第八章・3

 両開きの重厚なドアを、使用人たちが開く。  そこから、眩い光の洪水が沙穂を襲った。  まるで宮殿を思わせるような、華麗なヨーロピアンスタイルの大広間。  アーチ状の高い天井。  ステンドグラスに、シャンデリア。  真っ白いクロスを掛けられたテーブルがいくつも並び、その上には銀のカトラリーが輝いている。  気の早いゲストが何人も談笑しており、美しいドレスで着飾った女性も見られた。 「おや、主催者のお出ましだ」 「お招きありがとうございます。源さま」  真輝の元には、たちまち人が集まって来た。 「今宵は、お楽しみください」  沙穂がうかがい見ると、少し不自然な笑顔の真輝がそこにいた。 (これが真輝さんの営業スマイルなんだろうな)  ひとしきり話してしまうと、今度は沙穂が注目を浴びた。 「源さま、こちらは?」 「彼はわたくしの、恩人です」  体調不良で参っていたところを救われた、と真輝は正直に話していた。 (やっぱり、恋人だ、って紹介はしてくれないんだね)  気が萎れかけた沙穂だったが、周囲がそれを許してはくれなかった。

ともだちにシェアしよう!