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第八章・3
両開きの重厚なドアを、使用人たちが開く。
そこから、眩い光の洪水が沙穂を襲った。
まるで宮殿を思わせるような、華麗なヨーロピアンスタイルの大広間。
アーチ状の高い天井。
ステンドグラスに、シャンデリア。
真っ白いクロスを掛けられたテーブルがいくつも並び、その上には銀のカトラリーが輝いている。
気の早いゲストが何人も談笑しており、美しいドレスで着飾った女性も見られた。
「おや、主催者のお出ましだ」
「お招きありがとうございます。源さま」
真輝の元には、たちまち人が集まって来た。
「今宵は、お楽しみください」
沙穂がうかがい見ると、少し不自然な笑顔の真輝がそこにいた。
(これが真輝さんの営業スマイルなんだろうな)
ひとしきり話してしまうと、今度は沙穂が注目を浴びた。
「源さま、こちらは?」
「彼はわたくしの、恩人です」
体調不良で参っていたところを救われた、と真輝は正直に話していた。
(やっぱり、恋人だ、って紹介はしてくれないんだね)
気が萎れかけた沙穂だったが、周囲がそれを許してはくれなかった。
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