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第九章・2

 真輝は、盛大に不機嫌だった。  荒れてさえ、いた。 「武井。君は、自分が何をしたのか解っているのか」 「充分承知しております。ただ、これは真輝さまのため、源家のため。白洲さまもそれを解ってくださいました」 「沙穂……」  なぜだ。  なぜ食い下がって、ここにとどまってはくれなかったんだ。 (私が嫌いになったのか?)  いや、それは無い。  だがしかし……。 「真輝さま。そろそろお出かけの時刻です」 「解っている!」  今すぐにでもアパートへ、カフェ・せせらぎへ沙穂を迎えに行きたい。  しかし、本日は大切な議題を抱えた取締役会がある。 「武井。仕事が済んだら、沙穂を迎えに行く」 「真輝さま!」  武井を置いて、真輝は車に乗って出勤した。

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