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第九章・7
詳しい話は部屋でする、と郷に丸め込まれ、沙穂はレストランを出てホテルの一室に入った。
「僕、本当にカフェのオーナーになれるんですか?」
「なれるとも」
「そしたら……、お金持ちになれますか?」
「どうかしたのか?」
郷は、沙穂の全てを調べた、と言った。
もちろん、昨夜で源の屋敷を出たことも知っている。
だからこそ、こうやって沙穂に近づいたのだ。
「大方、身分が違う、とでも言われて屋敷を追い出されたんだろう?」
「そうですけど、違います! 追い出された、だなんて。違います!」
「解った解った。悪かった。しかし、そんなに金が欲しいのか?」
「お金があれば、真輝さんに少しは近づけるかな、って思って。それで」
郷は舌打ちした。
「やめておけ、あんな男。大層なお屋敷に住むことが、そんなに魅力的か?」
俺は違う、と郷は言う。
「マンションに、自由気ままな独り暮らしさ。自分の世話は、自分で焼く。それが俺のポリシーだ」
それに、と郷は唇に笑みを浮かべた。
「手っ取り早く、金持ちになれる方法がある」
「教えてください!」
「それはな……」
それは。
「それは、俺の可愛いペットになることさ」
素早く郷の腕が伸び、沙穂の手首をつかんだ。
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