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第十章・7

「う……」  沙穂は、顔を上げた。  いつの間にか、周囲が暗い。 「夜?」  泣きながら、眠ってしまったのか。  その時、沙穂は耳にドアをノックする音を聞いた。  この音が、僕を起こしたんだ。 「誰だろう」  大家さんかな、と思いながらドアを細く開けると。 「沙穂」 「……真輝さん!」  思わず閉めたドアの隙間に、真輝は足を挟んで阻んだ。 「閉めないでくれ。中に入れて欲しい」 「いけません。会えません」 「何かあったんだろう? 私にも言えないことなのか?」  真輝だから、言えないのだが。 「とにかく、お帰りください」 「とにかく、ドアを開けて欲しい」  でないと、私の足が痛くてたまらない。  沙穂は、ドアに挟んだ真輝の足に改めて気づいた。 「あ! すみません!」  沙穂がドアを大きく開いた隙に、真輝は部屋に滑り込んだ。 「沙穂、会いたかった」 「真輝さん。……真輝さん!」  沙穂はもう何も考えずに、真輝の胸に飛び込んだ。

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