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第十一章 二人の絆
沙穂が淹れた温かい紅茶を一口飲み、真輝はほぅと溜息をついた。
「おいしいよ」
「安いお茶で、すみません」
「沙穂が淹れてくれたお茶だ。とても、おいしい」
その優しい言葉を聞き、沙穂の目からはまた涙がこぼれた。
(一体、何があったんだ)
あえて早急に訊ねはしなかったが、彼の様子は確かにおかしい。
真輝は、直球勝負に出ることにした。
「沙穂。私と君の関係は、何だ?」
「……」
「恋人、とは言えないのかな」
「もう、終わったことです」
「悲しいことを、早まったことを言わないでくれ。私たちは、まだ終わってはいない」
でも、と沙穂はカップを両手で包んだまま答えた。
「パーティーでは僕のことを、恩人、と。恋人、とは紹介してくださらなかったですよね」
「あれには訳がある。もしあの場で君を恋人と紹介したら、武井が腹を切ると脅していたんだ」
「武井さんが」
生真面目な武井なら、本気でやりかねない。
沙穂は、納得した。
「武井さんは、僕と真輝さんは身分が違うとおっしゃいました」
「私はそのようなこと、毛ほども思っていない」
沙穂は、沙穂だ。
そう言って、真輝は彼の手を取ろうとした。
途端に、沙穂はびくんと腕を引っ込めた。
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