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第十一章・2
「いけません!」
「なぜ?」
「僕は……、僕は、真輝さんを裏切った人間なんです。穢れてるんです」
「だから、さっきから訊いている。何があった?」
「う……」
ぽろりと沙穂の目から、涙がこぼれた。
「実は……、真輝さん以外の人に……、抱かれました」
「……!?」
真輝は、ショックを受けた。
一昨日結ばれたばかりの、私と沙穂。
その彼が、もう他の男と!?
(いや、待て。沙穂と自分を一緒にするな)
真輝は、そう考えて冷静さを保った。
恋多き真輝なら、そんなことも過去にあった。
破れた恋を繕うために、すぐに新しいパートナー候補に飛びついたこともあった。
(だが、沙穂は違う。彼はそんな子じゃない)
「何か、理由があるんだろう? 話して欲しい」
「真輝さん」
優しいまなざしは、嫉妬の業火に狂ってはいない。
ぽつり、ぽつりと、沙穂は昼間の出来事を話し始めた。
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