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第十一章・4
武井の大声と真輝の落ち着き払った喋りは、沙穂の耳にも入っていた。
「真輝さん、10日間って」
「沙穂が私の屋敷にいたのが、10日間。私も、君の部屋に同じだけ住みたくなってね」
「そんな。狭いですし、食事も豪華じゃないし、バスも小さいです」
「構わないよ。沙穂さえいてくれれば」
今は、君の傍にいたい。
ただ、それだけだ。
「真輝さん……!」
「お腹が空いてきたな。沙穂の手料理を食べさせてくれないか?」
もちろん、私も手伝うがね。
そんな真輝に、沙穂の胸はいっぱいになった。
「僕、やっぱり真輝さんのことが、大好きです」
「私はその100倍は、沙穂のことが好きだ」
ようやく笑顔になった沙穂は、夕食の支度を始めた。
(良かった。ひとまず、落ち着いたようだ)
真輝は胸をなでおろし、沙穂と一緒に狭いキッチンへ入った。
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