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第十一章・5
交代でバスを使い、真輝が出てみると布団が敷いてあった。
「布団か。新鮮だな!」
「部屋が狭いので、ベッドが置けなくて。すみません」
「何を謝ることがある。さ、寝ようじゃないか」
二人で一組の布団に、身を寄せ合って潜り込んだ。
「ああ、いい香りだ。沙穂の匂いだ」
「石鹸とシャンプーの匂いですよ」
電灯を消し部屋が暗くなる。
すると、沙穂が真輝にしがみついてきた。
「……さん。真輝さん」
「私はここだ。安心して」
「……抱いてください」
「沙穂、君は今日、身も心も傷ついたんだ。その上私が」
「抱いて、清めて欲しいんです」
真輝はその言葉に、深く憂えた。
可哀想な沙穂。
「私でお祓いができるのだろうか」
「あなたにしか、できません」
沙穂は、真輝に口づけた。
温かなはずの唇が、ひどく冷たい。
「温めてあげよう」
真輝は、沙穂のキスに応じた。
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