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第十二章 婚約

「ん……」  沙穂が瞼を開けると、すでに朝日が昇っていた。  カーテンの隙間から、光がこぼれている。 「いい匂い。……卵?」  キッチンの方から、卵の焼ける良い匂いが漂ってくる。 「まさか、真輝さん!?」  飛び起きてパジャマのままキッチンへ歩くと、そこにはすでに身支度を整えて料理をしている真輝の姿が。 「すみません! 真輝さんに、朝ご飯作らせるなんて!」 「何、心配には及ばない。こう見えて、家事全般は身につけているんだよ」  いいから仕度をしておいで、と言う真輝の言葉に甘え、沙穂は顔を洗い、歯を磨き。  服に着替えたころには、すっかり朝食の用意が整っていた。 「温かいうちに、食べたまえ」 「すみません……」  でも、と沙穂は疑問を真輝に投げかけた。 「食材は、どうされたんですか? 10日間も留守にして、野菜が傷んでいませんでしたか?」 「近くのコンビニで買ってきたよ。沙穂は、いい場所に住んでいるな」 「すみません!」  沙穂は、すっかり恐縮してしまった。

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