83 / 98

第十三章・2

 カフェの帰りに立ち寄った店で、真輝は部屋着も購入していた。 「これがコットンの肌触りか。新鮮だ!」 「真輝さんは、シルク派ですもんね」 「いや、風呂上りにコットンは、なかなか気持ちがいいよ」  僕に一生懸命合わせてくれる、真輝さん。  でも、一言。彼に告白しなきゃならないことが、僕にはある。 「真輝さん。実は僕、お屋敷を出た時に、真輝さんに捨てられたんだ、って思いました」 「沙穂」 「ごめんなさい。お屋敷に入る前、バラの花束をいただいた時も、僕なんかすぐに飽きるだろう、って思ってて。それで」  真輝は、沙穂の手を取った。  では私も、一つ告白しよう、と真摯な目を向けた。 「倉木も言っていたように、私はこれまで多くの恋人と出会い、別れてきた」  パーティーの日も、恐れていた。  君を失うかもしれない、と。 「沙穂が私を嫌いになるか、私が沙穂を愛せなくなるか、とね」  臆病な男だと、叱ってくれ。 「だが、沙穂が本当に屋敷からいなくなってしまった時に、ようやく気が付いたんだよ」 「何に、ですか?」 「君は、私の全てだ。沙穂という存在は、私の中に深く根を張り、もう引きはがせない」  それを聞いた沙穂の目から、涙が一筋流れた。

ともだちにシェアしよう!