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第十三章・6

 遊園地に、水族館。動物園に、映画館。  沙穂がバイトを終えた後、真輝は彼に伴われていろいろな場所を巡った。  まるで、真輝が屋敷で沙穂をもてなしたように。 「これが、デートというものだな!」 「改まって言われると、恥ずかしいです」  そう笑い合いながらも、沙穂は不安な気持ちを抱えていた。 (明日で10日。真輝さんは、お屋敷に帰っちゃうんだ)  ソフトクリームを舐めながら、沙穂はぽつりと言った。 「僕、怖いです」 「怖い? 何が?」 「また、魔法がとけちゃうんじゃないか、って」  真輝さんが、遠いところに行っちゃうんじゃないか、って。 「何を言う。沙穂、君も一緒に帰るんだ。源の家に」 「でも、武井さんが。いえ、武井さんだけでなく、お屋敷の皆さんが、僕を受け入れてくれないんじゃないか、って」  自信を持って、と真輝は沙穂を励ました。 「君は屋敷にいる間、威張り散らしたり、わがままを言ったりしたかな?」 「多分、それは無いと思いますけど……」 「安心して。屋敷内での君の評判は、すこぶる良い」  だから、今まで通りにしていれば、間違いはないんだ。  真輝は沙穂の肩を抱いて、優しく撫でた。

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